==内ノ浦干潟のシオマネキが危ない==

 

みなさんこんにちは。平素は鳥の巣釣り場をご愛顧いただき誠に有難うございます。

鳥の巣半島の田んぼで稲刈り作業が始まりました。毎年串本のSさん家の稲刈りが地方で一番早いとテレビで採り挙げられるのですが、地域でトップを切ったN家は匹敵する早さです。米農家は収穫作業が終われば「やれやれ」です。暑い最中の作業ですが、しめ縄用の藁の収穫作業も今の時期に行われるそうですね。

釣り場の水温は梅雨明け宣言以降、30℃台で推移しました。これは熱帯地方並みの高水温です。高い水温が大西洋の大循環(=流れ)に深刻な影響を及ぼすのではないかと懸念されていますが、もしそうなれば地球環境や海洋生物のみならず漁業にも想像できないような事態が発生しそうです。

海は碧緑に傾いてきました。透明度は中位レベルからやや良です。

7月前半のチヌ類はほぼ1.5匹(1人当たり)となり、先月並みの水準でした。ただこの数にはアジやアイゴハンター達によって見掛けの分母が大きくなる影響も出ているので、純チヌハンターといった補正を加えれば、先の値はもう少し大きくなります。獲物は20~30cm台が主体で、40㎝超級も幾らか揚がりました。ただ、ここにきて大物は姿を消しつつあります。水温が上がってきたためかハタ類の幼魚などがサイドメニューに加わっています。

アジ類は引き続き20~25㎝クラス主体に食卓をにぎわす程度の数は揚がっています。暑さを避けて朝早くの短時間勝負が最近の傾向です。アジに混じってシオ(=カンパチ幼魚)やツバス(= ブリ幼魚)も釣れています。「もう少しサイズが大きければ・・」とは共通の願いですが、季節が進めばその可能性も出てくるはず。

アイゴはやや低調からソコソコと低水準傾向が続いています。運に恵まれるとかなりの日も極ごくまれにある模様。

 

早々と収穫作業が済んだ田んぼ(小屋の奥部)(鳥巣半島:7月下旬)

 

田辺湾の枝湾での一つで内ノ浦の奥に位置する干潟は県下有数のシオマネキの生息地ですが、その希少生物の数が激減していると地元紙が伝えていました。原風景であった干潟の自然が失われていくのは寂しい限りです。

かつて内ノ浦湾奥ではマガキの養殖が行われていたそうですが、私の記憶にこの景色はありません。一方、岸近くはアサリの好漁場であったことをよく憶えているし、何よりアサリ汁や茹アサリは春の食卓を彩る一品でした。残念なことに現在、アサリはほぼ絶滅状態です。シオマネキ類と並ぶ干潟を代表する住民であるチゴガニや海藻、海草類も減ってきているようです。

地域の住民として最も気になっているのは、土砂が堆積して水深が浅くなってきたことです。干潟は陸域からの土砂の堆積によって湿地となり、やがては乾燥地へと遷り替わっていきます。これは自然の流れですが、陸域から内ノ浦湾に流れ込む土砂の量が最近とみに増えたのは降雨後の河川や湾奥の濁りから一目瞭然です。周辺の開発が進んだことに加え、近頃とみに増えた降雨量が主要因と推察されます。

水深が浅くなると何が問題なのだろうか? 以下は素人考えですが、陸からの土砂の堆積によって急速に水深が浅くなるということは底質の種類や粒度組成が昔とは変わっているはずです。以前は長靴を履いて歩ける箇所は岸近くの一部であったが、今はその面積が格段に増えました。

底質の変化以外に、水深の低下は干満に応じて水面上に露出する面積やその干出時間が増すことに繋がります。水位が下がれば、それに伴って土盤の水位も下がり、ひいては地盤が固くなります。また、強い日射に晒された底質は温度上昇が起こるはずです。こうした複合的な要因は底生生物にとって致命的ともいえる環境変化です。

その他、化学物質の流入が影響を及ぼしている懸念も払拭できませんが、この点は定かでないし、恐らくデータも無いでしよう。

海底を浚渫して土砂を運び出せば、一時的に生物相に影響を及ぼしても将来回復する可能性はありそうです。ただ、かなり難しい決断になりそうです。どの程度の面積と深さまで掘り出すのか設計も難しいうえ、経費も掛かります。そうやって工事をしても成功するか否か厳然と見通せないということです(どういう結果を成功とするのか、と云う問題もあります)。

関連する話題となるかどうか不明ですが、旧い友人が北海道でアサリ床の造成を試みたことがありました。しかし目論見通りアサリに適した塩分環境の着低床を造成することができなかったそうです。

かつて内ノ浦干潟では近隣大学の学生が研究課題としてチゴカニなどの生態調査を行っていました。通常、こうした調査を行う際は底質や競合種なども調べるから、環境データも取っていると推察されます。そうしたデータが卒論や修論、その他の報告書の中に埋もれているのではなかろうか・・・。そうなら現在との詳細な比較も可能で、今後、環境保全や環境修復などに係わる施策を講じる際にも有用な情報になるはずです。

件の新聞には「干潟環境は悪化の一途を辿っている」とのみ記され、何がどうなっているのか述べられていない。“シオマネキの個体数激減“というからには定期モニタリングが行われていたと推察されます。環境面についてもう少し詳細もしくは掘り下げた背景情報を提供してもらえれば、この問題に対する関心や理解がより深まる、という期待含みの読後感でした。

==ご注意==

釣り場周辺でサメの目撃例と釣った獲物や道具への被害が増えています。複数種が居付いている模様です。比較的おとなしい種類と目されますが、サメはサメ、十分語注意ください。

釣りのみならず漁業や海洋レジャーなど様々な産業への被害は甚大なのですが、一方でサメは学術的に貴重なものが多く、また世界的に個体数が減少傾向にあります。サメは憎まれ役になりがちですが、こうした点があることも是非識って置いてください。