====人在りて街あり====
平素は鳥の巣釣り場をご愛顧いただき誠に有難うございます。
冬の底を抜けた感があります。南向き斜面の梅はほぼ満開です。路傍のスイセン、今年は咲き揃わないかと心配していたところ、いささか遅れて今盛期を迎えています。聴くところ例年に比べてクマノザクラも開花が遅れ気味とか。
釣り場の水温は2月一杯15℃を前後し、昨年より1~2℃低めで推移しました。3月に入って上昇に転じ、ちょっ君は16~17℃台まで昇温しています。海の色は引き続き碧みが強く、高い透明度を維持しております。ホンダワラ類が伸びてきたのが分かります。
2月は強い寒波が長く居座り、強い風と寒さで釣りには厳しい条件が続きました。数年前まで「何故か寒さには滅法強いみたい」といいつつ真冬の釣り台に歩を進ませていたTさん、しばらくぶりに別件で来場。足が遠のいていた理由を尋ねたところ、「近頃は目法寒さに弱くなったんです」。
超ベテランにしてこういう状況なので、残念ながら好不漁の実態は明らかでありません。しかしY名人が立て続けに40㎝前後のチヌ類を釣り上げた事例もあります。ただこれが2月を通じての全成果、月が改まっても悲しい討ち死に(?)が続いています。
釣り人の涙を知るや知らずや作業台の下では大型のチヌ達が悠々と泳いでいます。所用で立ち寄った釣り好きのH氏「あれは釣れますよ」。「捕らぬ狸の皮算用だな。スーパー厳しい闘いだね、彼らは」と正鵠をえた突っ込み。「魚も人を識別している」と最近の研究報告が伝えています。ま、よっぽど好条件が整えば取り込みが期待できるかも(期待含みで)。
アジ類についてもハンター達の出足は鈍く、今年はまだ目立った成果が得られていません。近隣のフィールドをホームグラウンドにしている知人曰く、「今年はアジがさっぱりダメ」とボヤいておりました。ただ先般、筏周りでにわかに激しい水音がしてその方向に視線を移したところ、水面を飛び跳ねる魚影(20㎝前後か)。大物に追われた青アジの群れと判断されました。時間と場所が合致すれば或いは・・・。
”紀州田辺 新庄郷土史(2024年10月刊)”
既にご存知の方も居られそうですが昨秋「紀州田辺 新庄郷土史」が発行されました。随分以前から企画されたものでありながら途中にとん挫があって世に出るまで随分時間が掛かったそうです。冊子本体はA4版300ページを超える大部なもので、民俗学から自然科学に亘る広い分野に精通した専門家15人程が分担執筆しており、写真も数多く使われています。
奥付の発行元は「新庄愛郷会」となっておりますが、書籍の価格が明記されていないので一般に広く公布することを意図したものではなさそうです。
これはちょっと勿体ない気もしますが、この種の本に興味を示すのは地元の住民か一部の専門家だろうから、当初から商業ベースの採算は想定せず、配布先も限定的なのでしよう。当方は旧知であった執筆者の一人から厚意で分けてもらえた次第です。
当然ながら記事には地元民であっても初めて知る事実があったり、馴染み或いは聴き及びの場所や人物が意外な歴史的事実を抱え込んでいたりして、全編を通して興味深く目を通せました。正に人が在ってそこで生活が営まれ、やがて街へと発展していく過程がよくわかります。先祖の営みがより身近に感じられますね。
惜しむらくは先の戦争や昭和南海大震災などについて最後の機会(恐らく)として生々しい体験談を古老達から掘り起こして貰えれば良かった、と想わない点もありました。これは既存資料が記事の主体であったためと推察されます。尤も年寄りから話を聴くのも何かと大変ですしね。
津波の前まで鳥の巣釣り場の北隣、円山の麓に田んぼが墾かれていたそうで、その風景がどういうものであったろうかずっと興味があったのですが、それを示す資料や写真が無かったので、これもいささか残念でした。
これは若い人にこそ手に取って貰いたいですね。ところで冒頭に一般公布を意図したものではなさそうと記しましたが、もしかしたら「新庄愛郷会」に連絡すれば入手できるかもしれません。