===鳥類言語学のあけぼの===
平素は鳥の巣釣り場をご愛顧いただき誠に有難うございます。
里山にウグイスの鳴き声が響き、一雨ごとに下草が伸びてきます。釣り場の裏山にあるビワ畑では袋掛け作業が最終盤に差し掛かった模様。
潮下帯ではお馴染みの海藻たちが存在感を高めています。ところがつい先頃、組合関係者が海藻の食害を防ぐ目的でウニの駆除を行いました。でもウニは全般に身痩せしているとのこと。一体何を食して命を繋いでいるのでしよう?
釣り場の水温は16~17℃をベースに、三寒四温の変動に呼応する如く乱高下しております。水温が一日で2℃も上下することは普通となっています。外洋の水温を視ている方々にとって信じがたい現象でしようが。
海は比較的高めの透明度を維持しておりますが、遠く海面を眺めると緑色が強まってきた印象を受けます。
チヌ類は月の半ばになって感触が良くなってきました。ベテランYさんの50㎝級を筆頭に40㎝台の良型もボツボツ上がり始めシーズンの到来を予感させます。バラシが多いとの一部情報も流れていますが、悠々と焦らずにチャレンジしてください。
アジ類は残念ながら目ぼしい成果を報告できません。近くの船着き場で竿を出す釣り人の姿もまばら。魚影は湾内全域に薄いようです。
新しい形態のマガキ養殖を模索中
マガキ養殖かごの引き揚げ作業が始まるとかごの中にトラップされた小魚目当てにカラスが飛来します。以前はカラスの独断場でした。ところがここ1、2年、オキヒヨドリ(正確でないかも)と思しき訪問者の姿が目立ってきました。カゴを引揚げた跡の周辺で何かを啄んでいます。
カラスに比べれば身体は半分以下の大きさ(但し細身で美麗)、しかもつがい(?)でなく単独行動です。カラスは2mぐらいまで人を近づけるのに対し、この鳥はやや警戒心が強く7,8mが精々でしようか。それでも釣り場ではカラスの次に人との距離が近い野鳥です。
近頃シジュウカラが会話を通じて意思の疎通を図っているという話をしばしば目にします。ご存知の方も多いはずで、若い鳥類研究者によって近年明らかにされた画期的な研究成果です。
何故なら一千年以上にわたって「言葉を操って意思疎通を図るのは人間だけ!」という鉄板的(独善的?)な常識を覆した画期的な研究成果ですから。
イルカやクジラがクリック音やホイッスル音で会話を交わしていると推察されており、若い頃には興味を掻き立てられました。軍事活用をも視野に、昔から研究が進められてきましたが、まだ全容を解明するに至っていないと理解しています。
さてシジュウカラが会話を交わしていると学術的に証明できたということは、この研究者自身が鳥の言葉を理解し得たということですね。種の壁を越えたマルチリンガルとして稀有な存在です。他の鳥類でも今後同様な事例が次々と見つかりそうな予感がします。
彼の“鳥のささえずりを追求する”モチベーションを支えたのは間違いなくお金を稼ぎたいといった世俗的欲求ではなく、「これは何かありそうだ、面白い、もっと識りたい・・・」といった好奇心など内面的欲求からに違いありません。
でも研究には機器や消耗品購入、現場への交通費などお金も必要で、その出どころは(スポンサー)は何処なのだろうとの疑問が湧きます。若い研究者ならポケットマネーをつぎ込み、情熱が活動を支えたということかもしれないし、或いは指導教員が幾らか援助があったのかもしれません。でも微々たるものでしよう。
一般にこうした類の基礎研究には国の税金を基盤とする科学研究費助成金(科研費)が有力な活動資金になり得ます。ただこれは競争的資金ですから、それなりに地位を得た匿名の研究者達によって研究課題として妥当か、成果が見込める内容か、といった視点から審査を受け、評価の高い一部の研究者のみが獲得できる仕組みです。
普通に考えれば”動物の言葉を明らかにする”という研究は突拍子もなさそうな目標設定であり、また近い将来にザクザクとお金を生み出してくれる類の成果も期待できそうにありません(将来的にはともかく)。
かくしてそれが画期的であればあるほどその挑戦は審査委員から「成果が見込めない」という辛口査定を受けて限りなく玉砕する可能性が高いわけです。でもブレークスルーの研究成果は常識の隙間から滲み出てくるのですね。
「鳥のさえずりの内容が分かっても我々の生活が目に観えて楽になるわけではない。限られた研究資源をもっと有効に使うべし」という意見はあるでしよう。でも身の回りの様々な鳥や動物の語りが理解できれば人生を愉しく豊かにしてくれるのではないでしようか!? むしろ「人生にはそれぐらいの余裕があっても良い」と個人的には考えます。
この時期、里山でウグイスが「ホーホケキョ」とさえずっていますが、あれは「ここにおいで、僕の下へ・・・(by 松山千春)」と呼び掛けているのかもしれません。「おお奴は情熱的だな、頑張れよ!」と声を掛けたくなります。因みに私は稲刈りの時期、山から聴こえる野鳩(?カワラバト)らしき鳥の鳴き声を脳内バードリンガルで「シュウチュウリョク キラスナ!」と翻訳し、暑さに参りそうな自分への励みとしています。
願わくば研究申請書の審査をする先生方には是非とも“地上の星”を見つけて戴きたいものです。ツバメに替って。