鳥の巣釣り場通信(2025‐20)
===瀬戸内海のマガキに異変===
常緑樹が優占する紀南の里山にあって、数は少ないけれども落葉樹が色づき、強まった北風に葉を落とし始めております。秋の深まりを感じさせます。この季節、ほっこりした小春日和であっても朝夕は冷えます。師走を目前にして寒さが一段と増した観があります。
水温は11月中頃に20℃を行ったり来たりという状況でしたが、直近は20℃をわずかに超えるレベルで推移しています。
海は蒼が増して透明度が増し(中~)高位となっています。釣り場の透明度はこれからしばらくの間が1年で最も高くなる時期です。そんな状況下、湾奥で夜光虫の赤潮が発生し1週間以上続いていますが、現在は終息に向かっていると推察されます。“冬の稲妻”ならぬ“冬の赤潮”とは! 透明度が高いわりに栄養塩レベルは高いのでしよう。
11月のチヌ類はほぼ2.5尾(一人当たり:暫定値)でした。小さいサイズは記憶から落とされる傾向があるため、実際はもっと釣れているはずです。サイズは前期に続き20~25㎝前後が圧倒的で、30㎝超えが極稀に混じるという状況です。
カキ作業の合間に竿を出した釣り愛好家H氏の新しい竿に40cm超のヘダイが喰いついたのには作業員一同ビックリ。本人に拠れば何でも人生で2番目の大物であったとか。お褒めからいじり等々様々な感想が飛び出したのは自然の成り行きでした。この1件は “(釣果)記録”には残せないけれど“記憶”に残る出来事となりました。こういう例もありますから、何方も辛抱強く粘れば想定外の大物に出会えるかもしれません。
アジ類は25㎝前後が主体であるものの日々の変動が大きく、ちょっと予想がつかない状況です。ベテランY師も「前回あれほど釣れたアジは何処へ往った・・・?」とぼやきつつ帰途に就きました。これはアジの都合、釣果に繋げるには運しかないのかも!?
アイゴは良型が数匹程度釣り揚げられる状況となっています。天候に恵まれた過日、“忘れ物を取りに”、とばかりに現れた専門のベテランハンターT氏。まあまあの釣果だったではないかしら。

寒さが増した早暁に釣り場へ向かう遊魚船
瀬戸内海各地の養殖マガキが歴史的不漁と伝えられています。報道に拠れば今年のへい死率は50~90%に達するとか。ちなみに例年なら30~50%程度らしいのです(個人的にはそんなに高いとの印象)。この原因ははっきりしないものの、①夏の高水温、②餌の不足、③高塩分に加えて最近提唱された④酸素不足が推測されうる有力な因子として注目されています。
複合因子が協働しているかもしれないけれど、例として広島湾の水温(広島県水産海洋技術センター;地先)着目してみると、最高水温は例年9月にピークを迎えており、平成7(2025)年は28℃超でした。平年に比べて2℃ほど高くなっています。一般に海の生物にとって2℃はかなり影響が大きい水温差と認識されます。
かつて広島県(広島湾)に和歌山県産マガキの種ガキが提供されたという記録があります。従って、広島湾のマガキは和歌山産マガキの遺伝子を受け継いでいると考えられます。和歌の浦の最高水温の平年値はほぼ28℃ですから、今年の広島湾とそれほど差がありません。ただし広島湾は自家採苗をしており、年月が経つ間に低水温系統のマガキが選抜されてきた可能性はあります。
現在、鳥ノ巣ではマガキの収穫作業を行っています。まだ作業の途上ですが、へい死率は例年5割前後で今年も同じぐらいのレベルに留まっているのではないか、との印象です。ただし、同じく高水温が長引いた昨年に比べても大型個体が少なく、全般に成長が悪い、という印象です。
また夏の高水温と同時期に大規模赤潮が発生しており、これはダブルパンチかと思っていたところ、これらのマガキへの影響は想定したより小さかったというのが素直な感想です。もっとも作業が及んでいない岸側での影響の度合いは把握し切れていませんが。実際、組合幹部のY氏は「潮間帯の天然マガキの死亡が多いようだ」と教えtれくれました。
さて一般にマガキにとって好適水温は15~25℃と云われております。田辺湾の当養殖場では15℃前後でも成長が認められます。むしろ「12月中頃~3月にかけての低水温季に成長が良い」と云えます。
当養殖場は三重県南部から種苗を入れているので温度耐性が広島湾と幾らか違っている可能性はあるとしても、これまでの当養殖場での経験等も併せてみると、現状みられる水温のレベルはマガキの大量へい死を招く致命的要因になり得るということはなさそうに思っています。高温環境下で餌の摂取が減って活力の低下を招くとしても、です。夏の潮間帯のマガキははるかに高い温度にさらされているはずです。
実際、瀬戸内海外海(徳島県及び愛媛県南部)の養殖場では必ずしも高水温が今般の大量へい死の主要因とは捉えられていないように見受けられます(朝日新聞資料)。ただし、広島湾などで収穫時期に遅れが出たのは高水温が長引いた影響が大きいと言えそうです(餌料の関与については不明)。
こうした状況から、個人的には瀬戸内海に広く共有された水温以外の要因の存在を疑っています。この点で広島大名誉教授の“貧酸素水塊の上昇説”は今後検証すべき価値があるかも知れません。同時に化学物質や病原菌の存在なども視野に入れた調査が望まれます。「こちらは命が掛かっているのだから答えを簡単に導くなよ!」というマガキの声なき声が聴こえませんかね。
マガキは当組合の主力生産物の一つでもあり生育について高い関心を持って見守っています。当場のマガキ作業は12月半ば過ぎまで続きます。引き続き釣り場の使用等についてご協力をお願い致します。
鳥の巣釣り場通信(2025‐19)
===辺境はタイムカプセル?=== 金木犀がシーズンを終え小さな花が地面を黄色く染めています。またこの季節に路上でよく眼にするのはドングリです、ドングリやシイの実の凶作が各地から伝えられ、これがクマやイノシシを人間の生活圏に差し招く要因になっていると云われているものの、「我が散歩ルート上では決して少なくなさそうなのに」と想いつつ踏みしめています。そうした中、珍しく落下したアケビの実を見つけました。子供の頃はおやつ替わりの木の実、東北では天ぷらで食す地域もあるそうですね。...
鳥の巣釣り場通信(2025‐18)
===潮風は健康長寿に効果?=== 10月半ばを過ぎても半袖シャツで十分過ごせていたところ、先頃急に冬の扉が開いたかの如く寒気が侵入し、長袖だけでは間に合わず薄手のカーディガンを重ねるまで一気に衣替えが進みました。冷気を感じ取ったのか金木犀も香りを放ち始めています。 海に目を転じれば、薄明の海面を行き交う“タチウオ”釣りの小舟。秋の深まりを感じます。釣り場来場者の方々も朝は冬とそん色のない衣装に替わりました。寒さを耐えるのはストレスですから、万全の準備は重要です。...
鳥の巣釣り場通信(2025‐17)
===未来へ繋ぐディスプレイ?=== 移入植物は“セイタカアワダチソウが至る所で繁茂しています。この黄色い花が鮮やかだけれど繁殖力がすこぶる旺盛で、背の高いその茎は固いので駆除するにも厄介な存在です。あちこち荒らしまわっているイノシシもセイタカアワダチソウの群生地は避ける傾向が見受けられます。悪いことに、お仲間のブタクサの類もあちこちへ侵入しています。最近これらの判別法が分かりかけてきました。...
鳥の巣釣り場通信(2025‐16)
===海は秋の表情に=== 彼岸を過ぎ、釣り場へ急ぐ朝の時間帯は車のヘッドライト点灯が必須となりました。陽射しが届く昼間は夏の熱気をまとっていても、海上を渡る風は秋の気配を運んでいます。早朝は長袖シャツが欲しいくらいになり、海も秋の表情を見せるようになっています。時にゆったり漂う季節の訪問者“タコクラゲ”が目撃できます。 水温は8月末以降30℃を下回り、直近は27℃前後で推移しています。昨年2024年は彼岸まで30℃前後で経過し彼岸を境に下がり始めたのに対し、今年は8月末から低めに転じています。...
鳥の巣釣り場通信(2025‐15)
===多様な自然が育むプランクトン性甲殻類=== 紀南地方では早出しのミカンが市場に出回り始めました。スーパーで早生品種が8~10個で400円ぐらい。棚の前で初物を購入しようかどうか迷って結局買わず、でした。ヒグラシが力を振り絞って(?)鳴き交わしています。当初より鳴き声が安定してきたように想えるのですが、これって気のせいでしようか?? 自宅の杏が葉っぱを落とし始めました。夏野菜が無くなるこの時期、我が家は芋のつるが野菜替わりとなります。...
鳥の巣釣り場通信(2025‐14)
===酷残暑にも秋の兆しが・・・=== 鳥の巣半島では稲の収穫作業が終了しました。裁断された稲藁特有の匂いが漂っています。時を合わせるが如く、あちこちでラッパ状の白くて大きな花のテッポウユリ(+ タカサゴユリ)が咲き始め、稲が刈られて単調に変った里の景色に彩を添えています。でもタカサゴユリは移入種であるため蔓延が危惧されています。...