===酷残暑にも秋の兆しが・・・===

鳥の巣半島では稲の収穫作業が終了しました。裁断された稲藁特有の匂いが漂っています。時を合わせるが如く、あちこちでラッパ状の白くて大きな花のテッポウユリ(+ タカサゴユリ)が咲き始め、稲が刈られて単調に変った里の景色に彩を添えています。でもタカサゴユリは移入種であるため蔓延が危惧されています。

彼方に去った立秋も何のその、身体に刺さる陽射し。夏に限れば暦の”節季”は歴史的な遺物となりつつあります。暑さ対策は世界的な課題となっているとは云え、世界主要都市の気温予想を聴いていると瑞穂の邦の首都東京がダントツに過酷ではないですか!? いささかショックでした。

強い陽射しを受けて釣り場の水温は弱い降雨後一時的に28℃台まで下がったのを除き30℃超えの高止まりを維持しておりました。しかし8月下旬になって30℃を下回る日もボツボツ出てきております。夜は秋の虫の音が響くようになり、ケイトウの花が蕾を付けていました。あんなに激しく暑い夏にも収束の兆しが窺えます(松本 隆風? 後はご想像で)。さて今後の水温の見通しとして、昨年は9月にも30℃台の日が数日あったので、気温の長期予報からみて今年も似た傾向になりそうな予感がしております。

田辺湾奥で7月末から続いていた赤潮はお盆過ぎにほぼ終息し、現在は緑碧の海色に戻りつつあり、7月半ば頃から異臭を放っていた海からの匂いもほぼ消えました。これに合わせて透明度は低~中位というところまで回復しています。但し、まだまだ植物プランクトンの活発な増殖は維持されている模様で、地元のベテラン漁師は「まだ海の色が良くない!」とボヤいていました。全面的に同意です。

大規模赤潮の収束に伴って魚影(残念なことにサメまで)が戻ってきているようです。以下は8月(と云っても後半)の概要です。

チヌ類は1.3尾(一人当たり)で、サイズは25~30㎝前後が主体となってきました。あるベテラン曰く「それなりに愉しめた。けれど“釣果情報”に乗せるほどではない」。釣れたからと云って満足できないベテラン釣り師の心の内が垣間見えました(釣果情報が過小評価となる要因の一つです)。

アジ類は豆アジが成長し小アジサイズが主体です。釣果としては早朝2,3時間で50尾前後、その中に尺クラスが数尾混じるといったところでしようか。あるアジハンター氏に依れば、「良型が増えてきた印象がる。でも個人的には梅酢で食べられる小型サイズが有難い!」とのことでした。

アイゴはベテランの地道なチャレンジが続いており概ね良型が両手、好調日は両手両足前後という日が多かったようです。

 光の矢が釣り場事務所に迫る2025年残暑の朝

 

当地を襲った今夏の赤潮は地元のベテラン漁師も数十年振りという規模と悪影響を残しました。釣り場の閉場に止まらず養殖中の貝類にも被害が出ており、残念ながらヒオウギガイは全滅です。全容は今秋の収穫時まで不明ながら、カキ類も口を開いた死亡個体が筏の上から確認されます。

その昔、田辺湾でハマチ養殖が盛んに行われていた半世紀ほど前、夏になると頻繁に赤潮が発生していました。海水の赤変に加え魚の餌料として与えていた生餌由来の魚油が海面に浮かび、子供心にも「これはひどい」と想える状態でした。

今般の赤潮は魚油成分こそ視認できないとは云え、先にも述べたように赤潮の規模としては「半世紀振り」との印象を強くもちます。この原因種は鞭毛藻の1種カレニア・ミキモトイで、1960年代以降日本各地の内湾や沿岸で貝類・魚類に甚大な被害を引き起こして有名になりました。その後も日本各地で様々な被害を及ぼしています。この赤潮種に因る人間への直接的な健康被害は報告されていないようですが、長引いた海の腐敗臭とその影響をどのように評価するか、です。

ここ4,5年、田辺湾奥では今回の赤潮種とは異なっているけれど毎年年末に小~中規模の赤潮が発生しています。これらは海洋環境の変質を示唆する前兆現象だったのかもしれません。そしてそれは一過性の現象ではなく、富栄養化が軽減されなければ毎年同じような事態が繰り返し発生する可能を示唆するものかもしれません。

それでは沿岸海域の富栄養化はどのようにしてもたらされるのでしようか? 旧い記憶を呼び起こしてみました:

古典的な理解では1)山や陸域に降った降雨によって河川を通じて海域にもたらされるもの、2)海洋循環(海流や湧昇流など様々な流れ)を通じて運ばれるものがあります。これら地球物理・化学的プロセスと生命活動は密接な連環の中にあり、通常水域環境は一定の水準で制御され且つ長期的に維持されているはずなのでカタストロフィー的な変化は起こしにくいと想われます。

この他に人間の活動に伴う栄養塩類の添加が考えられます。すなわち3)農業や家庭排水など人間活動に由来するもので、し尿もかつては処理されることなく海域に投棄されていました。魚類養殖の投餌なども含めて良いかもしれません。養殖と云っても海藻や二枚貝養殖は新たな投餌に依存しておらず既に海域にある栄養物質を使用しているため、逆に水域の浄化に貢献している面が大きいと考えられています。

先の3)、4)の項目について、関連法の制定や技術の進歩によって栄養塩の排出はかつての垂れ流しからみると近年は随分とコントロールが利いています。逆に、適度な栄養塩の添加は海域の生産性を高める面があります。

かつて支笏湖や洞爺湖への流入排水の規制強化に因ってチップ(= ベニザケの陸封型)の漁獲が壊滅的状態に陥ったという事例を前に紹介しました。

透明度の高い水は観光的な売り物として価値が高いのですが、漁業サイドからすれば「ブレーキが利きすぎ」ということかもしれません。さらに近年、瀬戸内海や有明海ではアサクサノリの漁業者から「栄養が足りないから生育不良に陥っている、どうにかして欲しい」という声が高まっています。これらは正常化が進みすぎたために起こった(生物生産という側面では)皮肉な現実なのかも知れません。例えそうであってもコントロールの効かない大規模赤潮はいただけませんが。

さて今夏の田辺湾の赤潮は“自然 (自然秩序の崩れ)”というより人為的因子(添加)が強く関与したものと推察しているのですが、データは少なく推測の域をでません(「ワトソン君の見方はどうですかね・・・??」)。

先のベテラン漁業者は「手をこまねいていると海が死んでしまう」と懸念を漏らしていました。原因が何れに遭っても、田辺湾でも栄養塩やプランクトンのモニタリング調査が必要な時期に来ているのかもしれません。