===多様な自然が育むプランクトン性甲殻類===
紀南地方では早出しのミカンが市場に出回り始めました。スーパーで早生品種が8~10個で400円ぐらい。棚の前で初物を購入しようかどうか迷って結局買わず、でした。ヒグラシが力を振り絞って(?)鳴き交わしています。当初より鳴き声が安定してきたように想えるのですが、これって気のせいでしようか?? 自宅の杏が葉っぱを落とし始めました。夏野菜が無くなるこの時期、我が家は芋のつるが野菜替わりとなります。
厳しい残暑の中にあって水温は8月末以降30℃を下回る状況となっています。今夏、水温が≧30℃を記録したのは7月7日を初日に8月29日が最後となりました。間で30℃を下回った日が数日あったため合計42日(一部推定値を含む)が≧30℃ということになります。
因みに前年2024年はこれが50日(初日が7月20日、最終日9月22日)に達していたため、昨年より減っています。また昨年に比べると高水温の立ち上がりが早く、収束も早まる傾向が窺えます。
気温は昨年より一段高いと云われ、また大気温に密接に連動する釣り場の水温として、2025年のこの動きは予想外であったと共に大変興味深いものがあります。黒潮の大蛇行が収まったことと関係しているのでしようか、専門家の見解を伺いたいところです。
長期間赤潮に覆われていた海の状態も現在はほぼ平常に戻っています。ベテラン漁師も「大方戻ってきたな」と話していました。従って透明度も中程度と云えます。
9月前半のチヌ類はほぼ2尾(一人当たり)となりました。サイズは圧倒的多数の30㎝以下クラスに40㎝前後の良型が幾らか混じるという構成です。ベテランにとって30㎝以下は餌盗り程度の感覚で釣果として念頭にない傾向が強いため、先の数字は幾らか過小評価となっています。サイドメニューはオオモンハタの幼魚やチャリコといったところです。
アジ類は25㎝前後がそこそこ揚がる状況です。対象サイズが大きくなり、逆に釣れる数は幾分下がった印象です。魚も成長に伴って捕食その他で数が減っていきますから理に適った現象と云えるのかもしれません。アジと釣り場が重複しますが中旬以降“シオ(カンパチ若魚)”がしばしば姿を見せるようになっています。
アイゴはベテランの地道なチャレンジが続いており引き続き良型が両手、好調日は両手両足前後というところです。幼魚を対象にすれば数は格段に増えそうですが、釣りとしての面白みに欠けるためか今のところチャレンジャーが現れていない模様です。

アジハンターの平均的釣果(現在はアジもやや大型化、稀にシオも・・)
ここ2年ほど富山湾の“シラエビ(= Pasihaea japonicus)”が極端な不漁に陥っており、その背景要因には2024年の能登半島地震による海底地形の変化があるのではないか、と先頃のニュースが伝えていました。
シラエビは深海性の小型遊泳性のエビで、生時は半透明に近い白地ベースの体幹部をもち一部挟脚の先端近くに赤い帯があって、これがアクセントになって実に優美な姿をしています。その色合いや姿容から富山湾の宝石と称えられております。
シラエビは、昼間は水深150~300mほどの大陸斜面上部に生息し、これが夜間になると浅瀬に浮上する日周鉛直移動を行っています。シラエビ漁はこの夜間浮上群を狙って船曳網で漁獲します。シラエビは日本の周辺海域に広く分布しますが、漁業として成り立つほど高密度で生息しているのは富山湾のみです。
富山湾は急深な湾で、シラエビのような深海生物が浅い層に蝟集し漁獲されることで知られています。“ホタルイカ”も有名ですね。
ここまで読んで、「これは駿河湾の“サクラエビ”漁業に似ている」と感じた方はかなり事情通と云えます。サクラエビも昼間は大陸灘上部に生息し、暗くなってくると海面近くに浮上してきます。そしてサクラエビ漁が営まれるのは駿河湾のみです(正確を期すなら台湾の一部地域でも)。
駿河湾も富山湾と似た地形と生態特性を持つ湾で、富士山を後背に急峻な海底渓谷を刻んでいます。両湾とも陸域から豊富な地下水が流れ込んでいます。駿河湾は深海生物を採りあげるTV番組などでしばしば紹介されているからご存知の方も多いでしよう。実は台湾のサクラエビ漁場も地形的によく似ているらしいのです。こうした地形特性は世界的のかなりユニークなもののようです。
ちょっと横道に逸れますが、東北沿岸で行われている”イサザ”漁は春先に海面に蝟集する”ツノナシオキアミ(シラエビの遠い親戚)“を対象とするもので、漁獲は基本的に昼間に行われます。 ”ツノナシオキアミ“は商品名”アミエビ“として流通しており、釣り人の皆さんには馴染みが深いプランク性甲殻類です。
ついでに何度か記したことですが、釣りの刺し餌として使う”オキアミ“は”ナンキョクオキアミ)と呼ばれるプランクトン性甲殻類(ツノナシオキアミの親戚)で、その名前の通り南極周辺の海域で漁獲されたものです。
オキアミ類は魚類や海鳥、クジラの好餌ですが、人間は旨く消化できないと聴きます。一時食品としての利用が盛んに試みられながら実現しなかった理由がこの辺りにあるのでしよう。かつてカップ麺のトッピング具材としてナンキョクオキアミが入っていたこともあるのですが、いつのまにか姿を消しました。
追記すると、我が国沿岸では浅海プランクトン性の”アキアミ(サクラエビの近縁群)”を対象とした漁もこれから本番を迎えます。カキ揚げ等にすると(個人的には)サクラエビより余程コスパが高いと感じます。漁獲は有明海など数か所に限られるものの、地域特産種として流通しています。アキアミ類は魚醤の材料として熱帯アジア圏では欠かせない食材です。