=さらば ミスター・サマータイム2022=

 

みなさんこんにちは。平素は鳥の巣釣り場をご利用いただき有難うございます。

鳥の巣半島の水田は収穫作業が終わりました。裁断された稲わらから放たれる特有の匂いも既に薄れつつあります。刈り取られた後の田んぼにノバトやスズメにカラス、トビまで集まっています。それぞれ嗜好は違っていても多様な食べ物が豊富にある証でしよう。

  水温は8月に入ると一気に30℃を超え、その後20日前後に幾らか中だるみがあった以外ほぼ31℃水準で維持されてきました。「このような高水温は4,5年振り」と前報に記しました。そこで釣り場の水温記録を調べてみたところ、2017年はひと夏の間に30℃を超えた日が21日ありました。今年2022年は8月末で22日となり記録更新です。水温計や測定方法が必ずしも統一されていないため厳密な比較はできませんが、平均水温は2017年より高いと推算され、近年稀にみる高水温環境になっていたことは間違いなさそうです。マガキの生育状況が注視されます。

その水温も曇り日が多かったこともあって直近は30℃をやや下回ってきました。但し、数日快晴が続けば短期的な揺り戻しがあるかもしれません。とはいえ、通常、釣り場の水温は9月に入ると下降局面に入り、また季節風が強まることや台風によって海水が攪拌されると温度は下がるため長期的には漸減傾向にあると予想しています。

湾奥水は紀州グリーンで透明度はわりと低い状態で経過しています。

内ノ浦湾奥でタコクラゲが多量に発生しています。10日ほど前に5~10㎝前後だったものが日々成長を遂げ、今や30㎝に迫らんとする大型個体がたくさん見られます。体色は茶色系がスタンダードながら、バリエーションが意外と豊富で、中にはコバルトブルーの個体も混じっておりました。泳ぐスピードが結構早く、水の流れに身を任せるプランクトン(浮遊生物)というよりマイクロネクトン(小型遊泳生物)と呼んだ方が適当かも知れません。タコを彷彿させるユニークな姿と行動は眺めていて飽きません。既に組合幹部N氏が独自の観察ツアーを催行したことを付記しておきます。

8月のチヌ類は1.6匹(1人当たり)で、20~30㎝の小型サイズが主体です。この時期はキビレやヘダイの方が大物が揚がる機会が多いようです。サイドメニューとしては引き続きグレ、チャリコ、ハタ類の幼魚などです。釣果にやや波があるものの好調を維持していると判断できます。また、どの釣り台でも成果が期待できそうです。

アジ類は引き続き低空飛行が続いています。久しぶりに登場したTさんの竿だしの結果も芳しいものではありませんでした。

アイゴは小型サイズ主体にある程度まとまった数が揚がっています。もう少し成長すれば釣りとしては面白いのかもしれません。が、クラゲほどの成長速度は見込めないでしよう。今しばらく時の流れに身を任せる必要があります。

内ノ浦湾に蝟集するタコクラゲ

最近のネットニュースに中国の若い世代の間で “ザリガニ(小龍蝦)”料理の人気が高まっているとありました。我が国ではこれを食材として使う事例はあまり聴かないのですが、関東のT市に住んでいた頃、レストランで「“アカザエビ”の・・」とメニューにあって供されたエビが実は“ザリガニ”でした。アカザエビは漁獲量が限られているため数が揃わなかったのかもしれません。

かつて大正天皇の即位に伴う饗宴でザリガニ料理が提供されたと記録にあります。この時に使われたのは“アメリカザリガニ“のようです。高級食材として認識されていたわけですが、T市のレストランで食した”ザリガニ“もそこそこいけました。

“アメリカザリガニ”はその名の通りアメリカのミシシッピー河流域が原産地で、1927年に鎌倉にあった“ウシガエル”の養殖場に餌として持ち込まれたのが我が国における起源とされます。その後、逃避等に拠って瞬く間に日本各地に拡がり、ここ鳥の巣半島のため池でも生息が確認されているそうです。このほか日本には“ウチダダリガニ”というやや大型の外来性ザリガニが生息しています。

日本にはもともと“ニホンザリガニ”という小型の在来種が北海道を中心とする冷水域に生息していました。しかし生息環境の悪化や大型の外来種に住処を追われるなどして著しく個体数を減らし、今や絶滅が危惧される状況に陥っています。

実はこれら3種に加えて観賞用で販売されているスーパー“ザリガニ”がいるようです。この“ザリガニ”はオスの関与なく雌だけで繁殖を可能とする単為生殖能力を持っているのです。もともとはアメリカを原産とする1種が欧州の水族館で飼育されているうち、紫外線によって遺伝的変化を起こし、先の特異な能力を獲得したと推察されています。今やこれがマダガスカルにも侵入して人間の居住域近くで急速に繁殖域を拡大しており、地域のユニークな固有生態系への悪影響が大いに懸念される事態となっています。現地では食用として利用されています。

淡水産の“ザリガニ”類は遠い昔に“ウミザリガニ”類(いわゆる“オマールエビ”)との共通祖先から袂を分かって淡水に侵入した生物群とされているから、その肉質も似ていると考えられます。先般、知人経由で送られてきた小論(内田亨,2022「ザリガニは有害外来生物か」)は「何かと目の敵にされる外来性“ザリガニ”を食材としてもっと利・活用できないか」と云った趣旨から書かれたものです。

さて、我が家で秋の虫の鳴き声が聴こえ始めたのは8月20日頃、やや過ごしやすい夜を迎えたのが24日頃、ツクツクボウシが鳴き始めたのが26~27日頃からでした。厳しい猛暑続きであった夏も終わろうとしています。早く涼しくならないかと願っていたはずなのに一抹の寂しさが湧き上がります。