=日本南北 秋の味覚=

 

みなさんこんにちは。平素は鳥の巣釣り場をご利用いただき有難うございます。

金木犀の香りが漂っています。風は南から北に変わりました。これまで釣り場事務所に着いて真っ先に行う仕事が窓を開放して外の冷気を入れる事でした。今はその必要がないほど冷えています。

水温は台風14号の通過から下降局面に転じ、冷え込むと25℃を下回る日もでてきました。直近はおおむね25℃前後で推移しています。湾奥水は碧緑に替わりつつあり、軌を一に透明度が増しています。

10月前半のチヌ類は2.2匹(1人当たり)となりました。母数にはアジやアイゴハンターの数も含まれているため、チヌ専門家に限ればこの2~3倍にはなるはずです。サイズは20~30㎝の小型が中心で、40㎝超えは宝くじに当たる程度の確率でしようか。また、中旬に入って以降、釣果に乱高下傾向が見られるのはやや気になる点です。

アジ類は10月初旬より好転(well comeback!!)し、“赤”に加えて“青”混じりの15~30㎝クラスが十~数十尾ほどといったところ。また、運が良ければシオなどが引っかかることもあるとか。好調な時間帯が限られるためタイミングを逸しないことが重要です。

アイゴは引き続き小型サイズ主体にまあまあの釣果です。水温が下がってきているためシーズン終了が視えてきました。今季最後のチャンスを逸することの無いようご注意ください。

  釣り場施設 ビフォアー&アフター(2022)

  大方は既にご存知の通り釣り場に新しい建物が建ちました。従来の釣り場事務所の機能に加え、水産の体験・研修施設としての役割を担うことになっています。旧い建物(写真左)は老朽化が進み安全面で懸念があるため何れ解体されると聴き及んでいます。旧事務所は東南アジアによくある水上ハウス風で景観に溶け込んだ佇まいが気に入っていたのですが、残念。これも時代の流れといえるのかも。

一方、新しい建物(写真右)の外観は今風で設計者の拘りが垣間見えます。また、内部壁に県産(恐らく)の杉板が用いられているのは地域経済への配慮のはず。その壁の一角に真新しい鏡が掛かっており、これは釣り場を御愛顧下さっているFさんからご恵贈の品とのこと。ご高配を深謝すると共に、来場の皆様の「闘いや帰宅前に服装を整える」等々、是非とも有効活用下さい。

もう一点、同様に新事務所で重宝している冷蔵庫は“Tさん→Tさん”のお客さん繋がりで譲り受けたものです。

さて、北の海の秋の味覚といえばサケ(シロザケ)とサンマは外せません。近年、どちらも不漁が懸念され、今年の漁期はじめも低調でした。サンマはここにきてやや持ち直しの朗報が届きました。購入機会が多い我が家でも喜んでいます。

このサンマ、北・東日本では刺身や塩焼きが定番です。サンマは和歌山県でも下りサンマの棒寿司や日干しが珍重されており、お土産としても好評とか。北と南のサンマでは別物と想われるほど味に違いがあるが、脂がのった北のサンマも脂が落ちて身が締まった地元のサンマもそれぞれに味わいがあります。

庭の七輪でもうもうと煙を揚げながらサンマを焼く祖母の姿がセピア色の記憶として残っています。 “もうもうたる煙”は北海道や東北沖で獲れたものだったからでしよう。地域に廻って来る魚屋から購入するほか、湾内で営んでいたハマチ養殖の餌の御こぼれに預かることもあったとか。

近頃、近所のスーパーの魚売り場に並ぶサンマには“台湾産”のラベルが貼ってあります。ここ10年ほど台湾や中国の大型船による沖取りサンマの漁獲量が急増しており、資源の枯渇が懸念される状況に陥っています。

“台湾産”と表記されたサンマは“台湾の船が北西太平洋で漁獲し、それを台湾の港に水揚げ後日本に輸出”されたことを示しています。今から10数年前までは漁獲量の多いサンマの販路を東南アジアに拡げようと関係者が努力しておりました。知り合いはそうしたうちの一人で、付加価値をつけるべく加工分野で知恵を絞っていたのを覚えています。サンマ余りは昔の物語、“あんな時代があったね”と記録の中に消えつつあります。

田辺湾の旬の味覚のもう一方の雄としてタチウオが挙げられます。薄明時の湾内を航海灯を燈してゆったり行き交うのはタチウオ狙いの小舟です。紀伊水道はタチウオの好漁場として知られていますが、田辺湾内深く入り込んでくる秋群は指2本半(体高の目安)前後の小型魚が主体です。「秋の到来を告げるこの味を」と心待ちにするお年寄りが大勢います。

“サンマ”に“タチウオ”、漢字ではそれぞれ“秋刀魚”に“太刀魚”と記します。“太刀”繋がりです。タチウオは「立ち泳ぎをするから」との異説もありますが、漢字表記から判断すると刀に似た姿かたちが名前の源と考えられそうです。

白状すると以前、「“タチウオ”を英語で“sword fish”と呼ぶ」と記しました。実は”sword fish”は”メカジキ“を指すらしいのです(ポリポリ)。でも幾つかある”タチウオ“の英語名の一つである”cutlass fish”は”短剣様の魚“という意味です。同様に英語の異名”ribbon fish”もひらひらと舞うリボンに由来するから、洋の東西を問わず姿容が名前を付けるうえで重要なカギになっていると云えます。

さて、ここで気分を変えて質問です。秋の味覚の代表サンマ、タチウオ、そしてサケの中で“赤身魚”はどれでしよう?