=厳しく長~い夏、それでもお別れの兆し=

 

皆さんこんにちは。平素は鳥の巣釣り場をご利用いただき有難うございます。

昼間の陽射しは真夏並みに強いといっても朝夕はぐっと過ごしやすくなり、挨拶が「暑いですねえ」から「やっと涼しくなってきたねえ」に替わってきました。太陽の高度が下がってきたことは事務所に差し込む陽射しから観てとれます。

海水温は9月に入ってからも30℃台が続出、月半ばになっても高留まりしています。この夏、釣り場において30℃以上の日数は既に31日を数え、昨年(30日)の記録を塗り替えました。今後の天気次第でさらに上乗せされる可能性すらあります。

高水温が長く続いているのは酷暑に因る強い日射の影響と推察しますが、昨年あたりからこの傾向が顕在化してきた印象です。但し、直近では29℃を下回る日も出てきており、やっと下降局面に入った兆候と理解しています(ネットには一時的との予想もありますが・・)。

釣り場に限らず異常とも見做される高水温現象があちこちで観測され、暖冷水の混合する東北沖に極めて高水温の水塊が広域・長期に亘って存在し、これがサンマの南下・接岸を妨げて記録的な不漁をもたらす一因となっているようです。

海の色はグリーン系、透明度はやや低めです。湾奥の船着き場周辺に“タコクラゲ”が集積しており、道路からも観察できます。白っぽいのは小型個体に多く、大型になるほど色が濃くなってくる印象です。N氏は昨年同様、見学ツアーを催行したのかどうか・・? カヤック部隊も既に気づいている、はず。

9月上旬のチヌ類は1.6匹(1人当たり)でした。チヌは25~35㎝の中小型サイズが主体ですが、そうした中でも引き続き40㎝超えの良型が揚がっています。この時期にこのクラスが姿を見せるのは最近年の特徴と云えます。サイドメニューの主役を担っていたオオモンハタ(幼魚)には幾分か減少の兆しあり・・・か??

アジ類は小アジ類が主体で、沖合の釣り台で比較的好調を維持しています。良型もそこそこの数が揚がったとの最新報告が届いています。また、ハリスを切られる事例が頻発しており、被害グループの間で犯人(魚)捜しに注目が集まっている模様。

アイゴは年魚が混じり始め一時より数が揚がるようになっています。但し、小型サイズで満足できるかどうか、でしよう。小型魚の開き干しは美味です。

 

 ここにも過ぎゆく夏を惜しむ命が・・・

 

 つい先日、(深く関わってなかったのですが)釣り場を拠点にアマモの野外観察会が開催された模様です。アマモ類は海に生息しているうえ海藻図鑑で採り上げられることが多いから“マツモ”や“アオサ”、“ワカメ”などと同じ海藻の仲間と思われがちですが、海草と書いて区別されるように種子植物(顕花植物)の仲間

沖縄ではジュゴンの主食になっていることをご存知の方が多いかもしれません。蛇足ながら、ホンダワラ類(こちらは本物の海藻)が密生して造られる海中林は“ガラモ場”と呼ばれています。

 アマモ類が密生した“アマモ場”はガラモ場と同じく様々な沿岸生物を育む”海の揺りかご”にたとえられます。ネットの百科事典には「アマモの詳しい生態機能は殆ど分かっていない」とありました。生態機能に関する評価基準は様々であるうえ、定量的な扱いが難しいために研究が遅れているということであって、先ず重要なことは多様な沿岸環境を維持することでしよう

海岸の埋め立てや汚濁の流入等の人為的かく乱はアマモの生息を脅かす主要因ですが、(人為的かどうか微妙とはいえ)海水温の上昇なども注視すべき因子となります。ジュゴンによるおおせいな採餌は食害と見做される一面があるかもしれません。しかし、彼らが排出する大量のフンが有機物の循環を促し、植物のみならず小動物の生産を下支えする貴重な役割を担っている、と何処かの記事で見ました。

 尤もアマモといっても、鳥の巣半島周辺で繁茂しているのは“コアマモ”で、親戚筋の“Theアマモ”に比べて小型であることからこう呼ばれています。アマモとの違いは他にも幾つかあるのですが、専門家でないとなかなか理解しづらいものです

この近辺のアマモ群落はうっ蒼とした海の林というより “ごま塩頭”程度(例えは悪いが)の生え方にしか視えないから、その規模に応じて生態的な機能も遠慮がちなものかもしれなません。コアマモは鳥の巣半島の砂泥底でわりと普通に観られますが、和歌山県全体では減少傾向にあるとされ、県の絶滅危惧種に指定されています

 ここで横道ですが、かつて鳥の巣半島のアマモ場周辺には “タチガイ(=タイラギ)”が数多く生息しており、これを先端に鋭い手鉤のついた長竿で挟み、砂から抜き採っていました。繊細な操船と竿捌きが必要なため網で掬う だけの“ツメバイ“より幾らか技術が要ったものと推察されます

可食部は貝柱のみ。とはいっても貝自体が大きいためなかなか食べ応えがあり、食卓に並べば「ほお~」と歓声があがるぐらい珍重されていました。海水浴場周りに生息していたタチガイを踏みつけて足裏に裂傷を負う事故も多かったのですが、子供の貴重なおやつ替わりになっていました。沿岸環境が変わり始めた高度成長期頃から姿を見なくなったのが残念です。