=秋の扉がバーンと開いた・・・=

 

  皆さんこんにちは。平素は鳥の巣釣り場をご利用いただき有難うございます。

釣り場事務所へ向かう早暁の冷え込みは晩秋並み。秋の扉が開いた途端、真っ盛りの秋に運ばれてしまった感があります。まるでモンゴルの季節の遷り変りをみるよう。M聖子の如く「・・・裸のままで飛び出す」なんて、とてもとても。あちこちで「衣替えの準備ができていない」という戸惑いの声が漏れていました。

彼岸花が終わってコスモスが満開です。朝の陽射しが通り抜けた花弁は鮮やかに輝き、神々しくさえあります。季節の風物詩でもある田辺湾のタチウオ漁は序盤の漁模様が今一つとの声が漏れます。モチベーションが揚がらないためか、出漁船が限られている模様。

釣り場の水温は漸減傾向にあり、寒気が南下した一時期22℃台まで下がったものの、その後は幾らか持ち直して直近は24~25℃前後で推移し、ほぼ昨年同期並みのレベルとなっています。透明度は幾らか上がり傾向でしようか。つい先日、湾奥で小さなプランクトンネットを曳く若者がおりました。タコクラゲは姿を消しています。何を採集していたのか・・??

10月上旬のチヌ類は1.5匹弱(1人当たり:暫定値)となりました。チヌは引き続き20~35㎝の中小型サイズが主体で、ごくごく稀に40㎝超えが姿を見せる展開となっています。サイドメニューから一時消えていたオオモンハタの幼魚がサイズも幾らか大きくなって再登場しています。他にはチャリコやアイゴに木っ端グレも。

アジ類は小アジ類を主体にまとまった数(うち1~2割ぐらいが大きめのサイズ)が沖合側の釣り台で揚がっています。これらは回遊している小群と推察され、一日に何回かの短時間勝負となっています。あわよくば大物をと狙っているアジハンター達がしばしば良型のセイゴをゲットしています。但し、専門家が爆釣した後はしばらく不漁と気落ち気味です。

アイゴは水温の低下が影響してか、やや低調かもしれません。しかし魚運に恵まれればそこそこ釣り上げているようですし、昨年は11月に入ってからも爆釣に近い日が何日かありました。シーズンの終わりが視え始めておりますが、最後まで辛抱強くチャレンジして戴ければ、と想います。

秋の扉が開いた日の釣り場の朝(層雲見参)

 

 今年も残り2月半となりました。冬が来る前に済ますべき案件が山積しています。釣り場では何と言ってもマガキの引き揚げ作業が大きな仕事で、関連業務と併せて年内いっぱいはとりわけ繁忙です。

 当養殖場では1年飼育のマガキを収穫しています。対して広島や宮城などの大産地では2年あるいは3年貝として収穫・販売してます。貝が大きい方が値段は上がりますね。但し、現場の経費が掛かってきます。蛇足ですが、愛生や大阪湾など瀬戸内海東部地域でも1年で収穫していると聴きました。

 短期養殖について詳細を理解していませんが、小型の1年で収穫するのは夏場にへい死する貝の多いことが背景にありそうですここ数年の生残率は大雑把に見積もって5割ぐらいで、収穫したマガキも小型サイズが圧倒的に多いのです有体に云って、養殖した稚貝の半分近くは収穫前に死んでしまっていることになります。従って2年も飼育すれば当初の4分の1になってしまうため、これでは如何にも効率が悪すぎます。

  この大きな減耗を引き起こす原因は必ずしも明瞭でありません。ただ、考えられることを2,3挙げると:

 先ず餌の量が養殖しているマガキに比べて足りていないのではないかという疑いがあります(環境収容量を超えた過密養殖)。

 かつて内ノ浦湾内ではマガキや真珠貝養殖が営まれていました。しかし、すべて撤退し、今やわずかに残ったのが当組合のマガキ・イワガキの養殖のみです。古老から、真珠貝撤退の理由が湾内の餌不足であったと聴ております。

 温度環境の厳しさも挙げられます。マガキの生育の適水温は15~26℃と云われます。例年、当湾では梅雨明けから急激に水温が上昇し、夏場はコンスタントに28℃を超えてきます。今30℃以上の高水温が一カ月以上続き、これは大きな懸念材料です。高温ストレスに加えて水中の溶存酸素量は水温が上がるほど低下します。

 台風が来た年はマガキの生育が良いと云われます。台風による降雨や波浪によって水温が下がります。これらは同時に水中に栄養塩供給する元となり、結果、マガキの餌となるプランクトンが増えると考えられます。恐らく、水温や餌が複合的に作用してマガキの高いへい死を誘発しているのではないかと推察します(私自身は餌 > 水温に傾いていますが・・)。

 「カキのシーズンは“-r”の付く月」という巷の言説は当地に限れば当てはまりません。個人的には1月下旬から3月初旬を推奨します。1月 (January)、2月 (February)、3月 (March)には漏れなく”-r”が入っているだろう」との声挙がるかもしれません。が、9月 (September)~12月(December)までの“-r月”は如何にも身の入りが足りないのです。当場では年末の販売量が圧倒的に多いのですが、味に納得がいかない方も多数おられるものと推察します。

 新庄ガキは天然ものも含め、「水温が20℃を切ってこないと身の入りが進まない」あるいは「満足できる味は年を越して松がとれてから」と云われます。是非とも年越し後のマガキを味わって戴きたいものです。

 さてさて、今年の出来が気になるところでありますが、関係者が目視観察した感想は、「出来が良くない」という声が多数でした実態はどんなものでしようか、答えが出るのは間もなく、です。

 お報せ:今の時期、釣り場の服装が難しく、朝は初冬、しかし昼間は陽射しが強いため夏仕様の2シーズン対応で準備ください。