=幸運は突然に?=

  みなさんこんにちは。平素は鳥の巣釣り場をご利用いただき有難うございます。

 梅の花もいつしか盛りを過ぎ、季節は足早に進んでいきます。天気に恵まれた日の田辺湾内には小さな船影が浮かびます。これは箱眼鏡を除きながら特産の“ヒロメ”を採る小船で、これも季節の風物詩。漁獲量が少ないため一般には殆ど出回りません。その風味は“ワカメ”よりあっさりしており、地元では味噌汁、シャブシャブや酢の一品として好まれています。

 釣り場の水温は記録的冷温であった昨年より幾分か高いとはいっても二月余りずっと15℃を下回っておりました。過日、ついに15℃を超え、以降このレベルで推移しています。本格的チヌシーズンには少し早いものの、Bさんの竿が50㎝に迫る良型を立て続けに揚げており、まさに独り舞台の観すらあります。格段に腕を上げたか(?)Bさん、今年は当たり年になりそうな予感も微かに・・・。

 片や、濃密群を形成していたアジに変調がみられ、釣果がやや下振れで乱高下しています。アジやサバの好漁と軌を一に良型のブリやヒラメが頻繁に姿を見せましたが、先日はついにサゴシ(=サワラ幼魚)も「乗り遅れるな!」とばかりの見参。有体に言えばその取り込みの確率は10のうちの1つ以下でしようが、時ならぬ大物出現に心を躍らせた方も多かったはずです。おっと、長物にめっぽう強いWさんも希少な一尾を上げておりました。釣り上げ時の感想が「やったー!」or「あちゃー」の何れかであったか不明ですが、その異才は依然として健在です(魚種名は伏せておきましよう)。

 

 釣り場の大物ヒラメ(60㎝級)

 初見参のサワラは日本近海の暖かい海に生息するカツオやマグロと同じサバ科の中型魚で最大体長は1mに達します。“魚”偏に“春”と書かれるサワラは春の訪れと共に産卵のため瀬戸内海に回遊してきます。三月から四月がサワラ漁の最盛期で、この時期の大型サワラは地域の人々にとって特別の存在です。また、夏以降に索餌・越冬のため外海へ出る“当春生まれ”の小型魚を対象にした漁も行われています。紀南地方でサワラの認知度は高くないのですが、紀伊水道はサワラの好漁場で、地域の重要魚種と位置付けられます。

サワラも出世魚の仲間で、瀬戸内海地域では小型のものから“サゴシ”→“ヤナギ”→“サワラ”と呼び名が替わります。

旧く、瀬戸内海周辺ではサワラの漁期に合わせて申し分のない一尾を携え嫁が婚家から里帰りするのが慣わしだったそうですし、入学や諸々の慶事の祝い品(魚=イオ)として珍重されました。大型魚を魔除けとして軒下に吊るす風習は日本各地で見られた旧い習俗ですが、瀬戸内海でもサワラがその役割を担いました。こうした一端からわかる通り、西日本では地域生活に深く密着した魚と言えます。

 気になるお味といえば、サバ科の中では「身質が柔らかめ」というのが私の印象です。足が速いので余程鮮度が良くなければ刺身には向きません。食材としての料理法はネット等で各種紹介されているので素人の出番ではありませんが、私のお薦めは軽く炙った“たたき”です。また、春の産卵群に比べて冬に外界で獲れる越冬群は脂がのって旨いといわれます。珍しいところでは、卵巣をボラの代用としてカラスミに加工されることもあったようですが、何処かにこの珍味について語れるは方はおられますか??

 ここ最近、湾奥にマダイが寄り付きはじめた気配があります。皆さん釣り道具の整備はお済ですか?