=ウツボ献上=

みなさんこんにちは。平素は鳥の巣釣り場をご利用いただき有難うございます。

先般、田辺湾の北部にそびえる高尾山周辺で初雪が舞うのを望見しました。本格的な寒さの到来ですが、全般的には暖冬傾向と感じています。何しろ足の指にできる霜焼は例年に比べてずっと軽めですから。スキー場も雪が降らず困窮しているとニュースが伝えています。長期予報に拠れば今後も冬型が続かず、周期的に襲来する前線の影響で雨が多いとか。何事も平年並みが安心できる昨今です。

釣り場の水温は年が改まってから幾分下降し、直近は14℃前後で推移しております。1月前半のチヌ類は0.2尾(一人当たり)に留まりました。釣り場がほぼアジハンター・ワールドになったこともこの数字に影響しています。「寒いと団子を握る気力が湧かない!」とベテラン釣り師が漏らしておりました。

一方の主役アジ類は15~20㎝の小型魚を主体に好調が続き、中には30㎝超の良型も混じっています。海の食物連鎖につらなるヒラメやハマチなども運が良ければ顔を見せてきます。残念ながらチヌハンターにとって今しばらく忍従の時期が続きそうです。

Hさん新年早々の快挙(ブリ若魚60㎝超)

先般、旧知の友人を通じて某大学の博物館に展示するウツボの捕獲を依頼されました。田辺湾内では比較的レアー魚と認識していたため簡単でないミッションと当惑したが、幸いにも知り合いの伝手で白浜の漁師さんから入手することができ、面目を施した次第。

ウツボは何といっても鋭い歯に特徴づけられ、面構えからも窺えるように獰猛なハンターと評される。タコとの格闘シーンは迫力があるらしい。当事者にとって不本意だろうが、魚らしくない独特の容姿が評判をとれない一因に違いない。

広く一般に出回らない地域特産種の範疇であるが、紀南地方では一夜干しの開きや細切りの空揚げがスーパーや土産物店に並ぶ。また、つみれ団子にして鍋で食すことも多い。白身は淡白であるが、皮が硬いうえに小骨が多いため調理に技術と根気が要る調理人泣かせの魚である。うちの母親も「ウツボを捌くと肩がこる」と嫌がっていた。四国では“たたき”も人気の一品であるが、この近辺であまり聞かないのはどうしてか ??

ウツボの学名はGymnothorax kidako (Temminck and Schlegel, 1847)である。命名規約に従って、学名はラテン語化された二名法と呼ばれる形式で表記される。前半部の”Gymnothorax”は属名(特定の家族を示す苗字のようなものと想って下さい。)、後半の“kidako”は種小名と呼ばれ、G・・一家の中で種毎に異なる名前が付けられている。「3部の構成でないか?」と疑問が挙がるかもしれない。カッコ内は厳密には種名ではなく、この魚を初めて報告した研究者の名前(この場合はテミンクとシュレーゲルの共著)とその公表年で、カッコ内に入っているのは後年属名が変更されたことを示している*。

この学名に日本語の響きを感じたので調べてみると、ウツボを “キダコ”と呼ぶ地域があり、テミンクらはそれに因んで名付けたと判断出来ました。ウツボの餌は前述のタコの他、甲殻類や小魚などで、結構グルメですな。(*植物名は表記法が若干異なります。)

冬季の鳥の巣釣り場は北西の風が強く魚の動きも鈍い時期です。それでもアジ類などの小魚が集まっていることが筏周辺に集う鵜の群れからも容易に推察されます。春に向かって雌伏するも佳し、寒風の中でアタリを探るも佳し、かな!?