=クラゲワールドのその後=

 

みなさんこんにちは。平素は鳥の巣釣り場をご利用いただき有難うございます。

先の台風11、14号共に近隣地域での被害は比較的軽微であったとみられます。釣り場は筏の連結に幾らか不具合がでていますが、日本各地で道路、宅地や農地に大きな爪痕を残したことを想えば、幸いでした。台風一過、内之浦湾奥に避難していた漁船が目の前を次々と漁場へ戻っていきます。

釣り場は9月21日から通常の営業を行っていますが、強風や波浪、船の曳波で目に見えない部分に傷みや劣化が進んでいる場合があります。通路や釣り台では十分注意を払うようお願いします。

  水温は9月に入ってから30℃超えが2日あり、今夏の30℃超えは24日となりました。記録更新です。9月前半は29℃前後で推移していたところに台風14号で沖合の深層水が流入したためか急下降し、21日現在は15℃を下回っています。この後は揺り戻しがあると予想されますが、釣り場の水温の変化パターンから推察して高水温のピークは過ぎたと見ています。

湾奥水は紀州グリーンだったものが台風によって濁りが入ってきました。従って、透明度は下がっておりますが、徐々に回復の傾向にあります。

9月前半のチヌ類は1.1匹(1人当たり)で、この時期としてはやや渋い数字でした。サイズは20~30㎝の小型が主体です。アジが大本命のはずのTさんが45㎝級を釣り揚げ「これは残暑の幻夢か!」、と驚かされる出来事が発生しました。「帰りにスーパーでマダイを仕入れてツインにして娘さんに届けようかしら」と漏らしておりましたが、どうやら実行されなかったようです。サイドメニューは引き続きグレ、チャリコ、サンバソウ、ハタ類の幼魚などですが、今年は特にオオモンハタの幼魚が多いように見受けられます。

アジ類は低空飛行ながら良型がポツポツ揚がっています。但し喰いつく時間が限られかつ予測不能とのことです。

アイゴは小型サイズ主体にまとまった数が揚がっています。魚体も徐々に大きくなっているようで、タイミングと腕次第でさらに満足度の高い大型個体が数匹程度混じる状況です。小型サイズを一夜干しにすればすこぶる美味です。但し包丁さばきが鍵となります。

その後のタコクラゲ(家族の如くサイズが揃った3個体)

内ノ浦湾奥に集結しているタコクラゲは(タケノコの如く)見る見るうちに成長を遂げ、大きいものは30㎝前後に達し、大小の個体が混じって湾内のいろいろな場所で群を形成しています。体色が茶色っぽく見えるのは体内に共生する褐虫藻に因るもののようですね。この藻類が光合成をしてその栄養の一部をクラゲが受け取っているらしいのです。クラゲは昼の間は海面近くを泳いで藻類の光合成を促しているはずで、それが表層に集結している主な理由と考えられます(ウインウインの共生関係といえるのかしら)。プランクトンには日周鉛直移動を行って昼夜間で水深を変える種類がたくさんいますが、太陽光が届かない夜間、タコクラゲは何処にいるのでしよう??

近頃クラゲ人気が高まり水族間では人気の展示アイテムになっているそうですね。タコクラゲは夏~秋の風物詩の一つですが、近年田辺湾で見かける機会が少なくなっていました。近所の古老も「今年は珍しい」との感想を漏らしていたので、今回の大発生は久々の“復活劇”と見做して間違いなさそうです。来年も姿を見せてくれるかどうか!? そう言えばクラゲ(別の種類)と泳げる塩水湖がパラオにあるそうですね。

横道に逸れるかもしれませんが、パラオには第二次世界大戦前まで“パラオ熱帯生物研究所”が置かれておりました。この研究所はその後の日本の海洋生物学を牽引した碩学を数多く輩出しており、日本の海洋生物学の歴史を語るうえで重要な位置を占めています。

数年前に知人から「パラオで水産関係の仕事を3年ほど・・・?」と打診を受けたことがありました。「田舎の親父にはとても務まらない」と丁重にお断りした(せざるを得なかった)のですが、万が一実現していたならクラゲの湖に遊ぶ機会があったかも。

逸脱ついでにいえば、クラゲの中には老成してくるとあるタイミングで幼体に若返りする種類があるそうで、「不老不死のクラゲ」として有名です。これは白浜にある京都大学瀬戸臨海実験所に勤めていた久保田先生(現在は私設の研究所を主宰している)が発見したものです。不老長寿が人間にとって幸福であるかどうか分りませんが、このクラゲの中にそのヒントを探ろうと世界の研究者がしのぎを削っています。