=二枚貝の中にひそむ小さな敵=

 

みなさんこんにちは。平素は鳥の巣釣り場をご利用いただき有難うございます。

沿岸低気圧が定期的に来襲する季節になりました。空港線の路傍に立つ梅の木が花を付け、下草に緑が混じってきています。内ノ浦湾内では稚アユ狙いの船が準備を整えました。

水温は15℃を前後しています。昨年の最寒期は12~13℃台がしばらく続いたのに比べると今年は2~3℃程度高めで経過しています。この高水温がヒロメの生育にどういう影響を及ぼすのか、近所の漁師さん共々気になる点です。透明度は幾分低下し、青から緑いろに変りつつあるようです。

「昨2020年の1,2月はチヌがそこそこ揚がっていたのに今年は・・・」と悲観気味になっていた矢先、Iさんの手によって20021年初のチヌ(35㎝)が顔を見せてくれました。待ち望んだ夢の扉・・・。

一方、アジ類は相変わらず好転の兆しが見えません。湾奥の波止場は駐車スペースが車で埋まり、ベテランに混じってにわか太公望たちがアジ釣りの竿を並べています。方や当釣り場、アジハンターTさんが探りを入れたものの反応ナシでした。ベテラン釣り師にしてこの結果。しかし大物マダイを取り込み損ねた事例もあったので、めげずにチャレンジして戴きたいものです。鮎の稚魚が来遊し、それを狙う海鳥たちがかしましくなっています。

鳥の巣稚アユ漁漁団の拠点となる舟屋

マガキの販売も終盤に差し掛かってきました。養殖場で販売する二枚貝は滅菌海水を通しています。簡単に言えばこれは消化管内に入り込んだ大腸菌などの病原性微生物を綺麗な海水で洗い流す作業です。冬場に流行して話題になるノロウイルスはしばしば人体に重篤な症状を引き起こすが、彼らは体細胞に入り込むためこの処理で取り除くことができない。これを浄化するには加熱若しくは高圧処理をするしかなく、当養殖場では加熱で食すようお願いしている理由がここにある。

有毒プランクトンが一定濃度以上発生するとお上からアサリやマガキ、ホタテなどの二枚貝の採取や販売禁止の通達がでる。ろ過食性二枚貝はこれらのプランクトンを餌として摂ることを通じて体内に毒成分を貯め込む。厄介なことにこの毒成分は熱に安定であるため加熱調理しても毒性が消えないから「口にしないのが一番」ということになる。フグ毒も熱に対して安定で、それもまた食物由来といわれております。

“イガイ類”は オシヤレな筋から“ムール貝”とも呼ばれ、スープやパエリヤなど地中海地方の海鮮料理に欠かせない食材であるが、マガキより貝毒を貯め込みやすい傾向があると聴いたことがあります。カレーで煮込んでも旨いんですけどね。当養殖場では県の協力を得て定期的にカキ類の毒性検査を実施しているが、幸いこれまで基準値を超えたことはない。

蛇足であるが、近年トラフグを陸上で人工餌料を与えて養殖を試みている施設があちこちにできている。理屈の上で、餌に毒が混じってないなら養殖されたトラフグも無毒のはずである。実際、人工飼育されたトラフグは毒性を示さないという。しかし、流通過程で天然魚が混じってしまう危険性や毒化のメカニズムが完全に解明されないうちは現状の安全管理基準が緩むことは難しいようです。微生物による発酵処理でフグの生殖艘を無毒化する伝統の技があるようです。

わが身を振り返えると、食当たりでは何度も痛い目にあってきた。敵は何処に潜んでいるかわからない。体中の水分と栄養分を抜かれつつ、二日ほど旅先で寝込んだこともある。しかしその事に因って特定の食材を忌避することは殆ど無い。諦めの悪い性格のせいかも知れない。

二枚貝は有毒プランクトンをたらふく摂って身を太らせる。毒が抜けたら食べ頃に違いない(恐らく)。