鳥の巣釣り場通信(2025‐21)

===時間は止まらない===

 

下草の冬枯れが進む中、存在感を放っているのは水仙です。庭木として植えられた山茶花があちこちで大ぶりの花をつけ、景観にアクセントを加えています。この樹種と間違えやすい寒椿の開花はもう少し先になります。花といえば、「今年は千両が咲かなかった」と年寄りが漏らしておりました。

寒さが増して釣り場の水温がコンスタントに20℃を下回るようになり、直近は17℃付近で微変動しています。

海は蒼が増して透明度は基本的に(中~)高位がベースではありますが、11月下旬から湾奥の海面が赤く染まる夜光虫赤潮が認められ、これが12月下旬には鉄さび色の赤潮(繊毛中の1種メソディニウム ルブラム:県情報)に替わり、年末まで継続しています。

後者の原因種はせん毛虫のメソディニウム ルブラムという種類です(県情報)。この原生生物は葉緑体様物質を持っていて独立栄養が可能とされています。

先報でも記したように赤潮現象は一時終息の兆しを見せたのですが、時間を置かず別の種に置き換わって復活し、一月ばかり続きました(現時点で終息の確認は取れていません)。

ここ4,5年来、年末に短期間の赤潮発生が確認されてきましたが、ここまで長引くのは初めてです。通常赤潮はある種の植物性プランクトンの大増殖によるもので、海中の栄養塩が消費されると収まるものです。しかしながら一時的に終息の兆しがみえてもすぐに復活し、かつ長期化するのが今年の田辺湾における赤潮の特徴です。

さて天候が荒れ気味だった12月は釣りに向かない日が多くありました。そのためもあってチヌ類は1.5尾(一人当たり:暫定値)に留まり、サイズは前期に続き20~25㎝前後が圧倒的で、30㎝超えが極稀に混じるという状況でした。手のひらサイズを含めるともっと釣れているとはいえ、ハンターの満足度は低かったかもしれません。また1年を通しての釣果は2尾弱というところになります。

アジ類は25㎝前後が主体であるものの日々の変動が大きく、相変わらず予想がつかない状況です。小ぶりなサイズもあって今一つ人気がないのですが、対岸の漁港の岸壁では連日何人も竿を出しています。冬寒の雨の中でさえ数人の釣り人が見受けらましたから、それに見合う対価はあるのでしよう。筏周りでも15cmサイズの青アジの群れが散見されます。

アイゴは良型が数匹程度釣り揚げられる状況となっています。マガキの作業を行っている筏の直下に良型のアイゴが作業を追いかけるように現れます。それを見た釣り愛好家H氏も心を動かされた模様ですが、生憎竿を持っていなくて残念! 緊急事態に備えた準備が大事です。でもなかなか釣れないのですよね、彼らは。

 

波打ち際に寄せられた冬の夜光虫赤潮(田辺湾奥 2025年12月)

 

新庄漁協における今年のマガキ収穫量は個体数ベースの死亡率は約50%で、昨年に比べると60%程度の生産個数にとどまりました。尤も昨年は、夏に高水温が続いたわりに生き残り率が高い年回りでありました。これに対して前年及び前々年(2022年、2023年)は最近10年では明らかに不良年でした。それでも小型個体の割合は今ほど少なくなかったと記憶します。近年は好不良の振り幅が大きく、小型化の傾向が強まったのでしようかねえ!

今年、瀬戸内海では記録的なマガキ不漁を伝えられています。原因として諸説挙げられているものの究明は今後の調査研究に委ねられています。重要産業ゆえに現地の試験機関はてんやわんやの状態でしよう。瀬戸内海に対して三重県などは極めて不良であった昨年に比べて今年は順調年と伝えられています。かよう一筋縄でない状況下、原因究明の苦戦は推して知るべし、です。

ここ何年かマガキ養殖に携わった感覚として、現在の水温レベルでは何とか耐えられ、水温が報道されているような大量へい死を引き起こす主要因になっていない印象を受けます。ですが、夏~秋の高い水温がマガキの成長を阻むことは確かそうです。

田辺湾域においてマガキの成長を支える餌料不足は予ねてより指摘されていた点です。十分な餌が得られないところへ高い水温が追い打ちをかけ、死亡するマガキが増えることは十分考えられます。

一方で、「プランクトンの爆発的な大増殖である赤潮はマガキの餌にならないのか?」という疑問を覚える方もおられましよう。かつて「“キリン”さんが好きです。でも“ゾウ”さんはもっと好きです」というCMがありました。餌生物にも良し悪しがあるかもしれません(珪藻vs鞭毛藻のように)ですし、そもそもあまりにも高密度のプランクトンは鰓詰まりを招いたり、細胞からの化学物資の排出が魚介類へ悪影響を及ぼすことがあります。もっと素直に「飽きたから別のものを食べさせろ」といった要望もあるでしよう・・・。

田辺湾では今年は4月下旬にもヘテロシグマ赤潮が確認されております。これらのことから、栄養塩が湾内に間断なく供給されて十分高いレベルに保たれ、ちょっとした環境負荷や刺激でプランクトンの大発生を招く、という状態にあることが示唆されます。

季節を問わない赤潮の発生と長期化は田辺湾の海洋環境の先行きに懸念を抱かせます。早期に有機物質の流入経路を突き止める必要性を強く願う次第です。

つい先頃「今年ももう数日ですね!」と近所の人に話しかけたら、「ほんまに。 早いなあ!」と返してきました。細胞レベルではこの1年で身体の過半が新しいものに置き換わっているはずなのに、新しい部品と取り替えた機械の如く新品観がありません。いや、細胞が置き換わっていなければずっと早く寿命が尽きていた、ということなのでしよう。我々はだましだまし使っている旧い機械のようなものです。

さて年の瀬にあたって今年の釣り場のトピックを想い起こしてみました。

 

==釣り場のトピック(2025年)==

・近年の高水温傾向の影響でマガキの成熟が進まず販売を12月末から1月中旬へと延期。

・3月のチヌは好調だった2023年、2024年に比べやや低調なスタートとなる。

・梅雨が6月中旬に明け水温上昇が早まる。また夏の高水温(≧30℃)が40日に達し記録を更新。

・新たな養殖形態を目指し、三倍体カキの試験栽培に着手。

・真夏(7~8月)にカレドニア ミキモトイの大規模赤潮が発生。半月以上継続。このため釣り場も4日間の閉鎖となる。初冬前半に夜光虫、引き続いて

・マガキ収量は個体数ベースで2024年の6割で大型個体が少なかった。

 

==マガキ販売に係るお知らせ==

・今シーズンのマガキの販売は年を越した令和8年1月20日から予約を受け付け、1月26日からの引き渡しを予定しています。販売数に限りがありますのでこの点ご留意ください。基本的にすべて予約販売です。詳細は組合事務所(☎0739 22 2057)若しくは鳥の巣釣り場(0739 24 2761)にお問い合わせください。

鳥の巣釣り場通信(2025‐15)

===多様な自然が育むプランクトン性甲殻類===   紀南地方では早出しのミカンが市場に出回り始めました。スーパーで早生品種が8~10個で400円ぐらい。棚の前で初物を購入しようかどうか迷って結局買わず、でした。ヒグラシが力を振り絞って(?)鳴き交わしています。当初より鳴き声が安定してきたように想えるのですが、これって気のせいでしようか?? 自宅の杏が葉っぱを落とし始めました。夏野菜が無くなるこの時期、我が家は芋のつるが野菜替わりとなります。...

鳥の巣釣り場通信(2025‐14)

===酷残暑にも秋の兆しが・・・=== 鳥の巣半島では稲の収穫作業が終了しました。裁断された稲藁特有の匂いが漂っています。時を合わせるが如く、あちこちでラッパ状の白くて大きな花のテッポウユリ(+ タカサゴユリ)が咲き始め、稲が刈られて単調に変った里の景色に彩を添えています。でもタカサゴユリは移入種であるため蔓延が危惧されています。...

鳥の巣釣り場通信(2025‐13)

===厳しい決断===   平素は鳥の巣釣り場をご愛顧いただき誠に有難うございます。 鳥の巣半島では稲の収穫作業が始まりました。例年、串本の坂本さん家の収穫作業が県下における先駆けとしてマスコミで取り上げられているのですが、今年はここ鳥の巣半島のN家が鼻の差でかわしたものと推察されます。...

鳥の巣釣り場通信(2025‐12)

===水の助けられ水に泣く===   平素は鳥の巣釣り場をご愛顧いただき誠に有難うございます。 鳥ノ巣半島の入り口に立つ塩生植物ハマボウが鮮やかな黄色の花を着けています。しかしながら高い気温と少雨を反映してか普段の年より花数が少なく鮮やかさに欠ける印象です。早い梅雨明けとその後の高温に彼らも大変なのだろうな、と推察する次第です。...

鳥の巣釣り場通信(2025‐11)

===雨が物語を紡ぐ===   平素は鳥の巣釣り場をご愛顧いただき誠に有難うございます。 鳥ノ巣半島の水田ではi稲の実入りが進み始めました。高い気温を反映してか昨年(もちろん例年)より数日前倒しになっています。問題は今後の水の具合と病気並びに高温障害の程度でしようか。国内のコメどころの多くは鳥の巣半島より気温が高いうえ、長引く暑さが米の品質にダメージを与えます。今年の米生産は量も品質も安心できません。...

鳥の巣釣り場通信(2025‐10)

===最初の一尾===   平素は鳥の巣釣り場をご愛顧いただき誠に有難うございます。 今の時期、落ち梅にビワが田舎道のあちこちで眼につきます。近頃はこれら先行組にヤマモモが加わってきました。ヤマモモの種は靴や車の溝に入り込むので厄介です。 ヤマモモは子供の頃の貴重なおやつでした。近頃の小学生はヤマモモを知らないということは以前記しました。地域を代表する樹種なのに残念。...

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